「どっちがいい?」と聞いても返事がない。選んだ物を渡したら、今度は「こっちじゃない」。子どもに選んでもらうときは、声のかけ方だけでなく、何を任せるかを先に考えてみましょう。
まず、大人が安全や予定を確かめ、どちらを選んでも受け入れられる二つを用意します。実物を見せて短く尋ね、選べないときは手助けを増やすか、選ぶ機会をあとに回してかまいません。[1][2]
IMANO MANABI(イマノマナビ)では、家庭で試せる選択肢と、うまく選べないときの対応を整理しました。主に、物や短い言葉を手掛かりに選び始めた乳幼児とのやり取りを扱います。乳児への関わりも取り上げますが、二択ができる年齢や、必ず自分で決められる方法を示すものではありません。
選択肢を出す前に、大人が決める範囲を確かめる
たとえば、親子で読む絵本を選ぶ場面なら、今ある二冊のどちらでも読めるかを確かめます。片方は長くて今日は読めないなら、初めから別の一冊に替えておきましょう。選んだあとに「やっぱりそれはだめ」と戻さずに済む準備です。
国際モンテッソーリ協会(AMI)の家庭向けサイト「Aid to Life」は、大人がどちらの結果も受け入れられる選択肢を示し、子どもの決定を受け入れることを勧めています。[1] 二つの候補は、どちらも実際に選べる物にします。
安全と必要な世話は大人が引き受ける
危険な物を触ってよいか、道路へ一人で出てよいかは、子どもの選択に任せません。危険が迫っているときは返事を待たず、安全を確保します。必要な世話や、動かせない家族の予定も、大人が判断して伝える部分です。
「手を洗うよ」と伝えたあとで、選ぶ余地があるなら「拭くのは白いタオルと青いタオル、どちらにする?」と聞けます。手を洗うかどうかと、どのタオルを使うかを分ける例です。選べる部分がない日は、無理に二択を作らず、することを短く伝えて手伝いましょう。[2]
脅しや、大人の正解に誘導する二択を避ける
「片付ける? それとも全部捨てる?」は、安心して選べる二択になっていません。また、二冊を示したのに、片方を指すたびに「こっちのほうがいいよ」と聞き直せば、本人の選択を受け入れたことにはなりません。Aid to Lifeも、選択肢を操作や脅しに使わないよう示しています。[1]
二つの実物を見せ、一度に一つだけ尋ねる
「何がいい?」と部屋全体から選んでもらう代わりに、候補を手元へ持ってきてみます。米国の公衆衛生機関である疾病予防管理センター(CDC)は、2〜4歳の保護者向け資料で、簡単な言葉による二つの選択肢や、一度に一つの具体的な伝え方を紹介しています。[2]
絵本を選ぶときの出し方
- 二冊とも表紙が見えるように、重ねず並べます。保護者がそばで一緒に扱える位置に置きましょう。
- それぞれを示して「ねこの本と、乗り物の本、どちらを読む?」と聞きます。すぐに別の質問を重ねず、言葉や手の動きを待ちます。
- 選んだ様子が分かったら、「ねこの本だね」と確かめ、その本を開きます。開くところは大人が手伝ってかまいません。
これは家庭で試すための例です。読む本、座る場所、読み終えたあとの行動まで一度に聞かず、今決めることを一つに絞ってみてください。
手を拭くタオルを選ぶなら、清潔で今使える二枚を見せます。「どちらも使える」という条件を整えれば、着替え以外にも選ぶ場面を作れます。二つは始め方の目安で、毎回二択を出す決まりではありません。自分から本を持ってきているなら、安全と予定に問題がなければ、その希望を受け止めるところからで十分です。
言葉の返事だけでなく、指さしや手の動きも見る
お子さまが言葉で答えなくても、一方に手を伸ばす、指さす、差し出した物を受け取るなどの動きが手掛かりになります。米国の乳幼児支援プログラムHead Startは、乳児とのやり取りで、視線や身振り、手を伸ばす動きを見て応じる方法を紹介しています。[3]
本へ手を伸ばしたら、「この本が気になったかな」と近くで見せてみましょう。その後の反応も見て、本人の意思を確かめます。偶然見た物をすぐに「選んだ」と決めつけず、言葉以外の反応も確かめながら進めます。
まだ二つを比べにくそうなら、返事を求めすぎない
乳児や、選択肢の意味が伝わりにくいお子さまに、幼児と同じやり取りを求める必要はありません。一つの絵本を見せて「一緒に見ようか」と声をかけ、顔や体の動きを見ながら関わる方法もあります。[3]
「何歳だから選べるはず」と決めず、実物が見えているか、言葉が伝わっていそうか、今そのことに関心があるかを見てみます。指さしや発語をさせるために、欲しい物を渡さず待ち続ける必要はありません。
選ばないときは、待つか大人が進めるかを分ける
返事がないときは「自分で決める気がない」と考える前に、候補が見えているか、質問に気づいているかを確かめます。眠い、空腹、周囲の刺激が多いときには、気持ちや行動を整えること自体が難しい場合もあります。[4]
今しなくてもよいことは、選ぶのを休める
絵本をどちらも押し戻すなら、「今は読まないんだね」と本を置き、遊びや休息の様子を見てもかまいません。「これも嫌? ではこれは?」と次々に候補を増やさず、選ぶことをいったん終える方法です。理由が分からないまま「嫌だったんだ」と決めつけず、「今は置いておくね」とだけ伝えてもよいでしょう。
今必要なことは、説明して大人が手伝う
手洗い後にタオルを選べないなら、「今日はこのタオルを使うね。拭くところを手伝うよ」と伝えます。「自分で決めないなら、もう知らない」と突き放さず、必要な世話へつなげましょう。選ばないときは、待てる用事かを大人が判断します。
泣いているときも、二択を言い続けるより、そばで安全を確かめ、休息や必要な手助けを優先します。大人が進めることを伝えても、すぐに納得したり泣きやんだりするとは限りません。
第三の案が出たら、同じ条件で考える
二冊とは別の本を持ってきたら、今読める本かを確かめます。読めるなら、その希望を受け入れてかまいません。また、図書館へ返して手元にない本を「あの本がいい」と求めたときは、「その本は返したので、今はないんだ」と短く伝えます。二択を守るためだけに断らず、安全や時間、手元にあるかという条件に戻って考えましょう。
選んだあとも手伝い、次に渡す選択肢を見直す
選んだ本を自分で開けなくても、手伝ってかまいません。タオルを選んだあと、手を拭くのを手伝うこともできます。選ぶことと、そのあと全部を一人ですることは、別々に考えましょう。
途中で別の本に替えたくなったら、今替えられるかを大人が確かめます。余裕があれば替えてもよいですし、先に「今日は一冊」と伝えていたなら「今日はこの本でおしまいにするね」と伝えてもかまいません。「自分で選んだのだから最後まで」と、選んだことを責める言い方は避けましょう。
振り返るときは、選ぶ速さや泣かなかったかだけで評価せず、「実物を見せたら手が伸びた」「質問を減らしたら伝わった」「眠そうなので大人が用意した」など、次の関わりに使える様子を一つ覚えておきます。
まずは、家にある二冊の絵本など、どちらでも受け入れられる一場面から試してみてください。毎日の回数を決めたり、新しい道具をそろえたりせず、お子さまの反応に合わせて選ぶ範囲と手助けを調整していきましょう。
参考情報
- 国際モンテッソーリ協会(AMI)/Aid to Life「Making Choices」
- CDC「Tips for Giving Directions」
- Head Start「Early Social Interactions Build Connections in the Brain」
- 国際モンテッソーリ協会(AMI)/Aid to Life「Setting Clear Limits」
情報確認日:2026年10月16日