ぬいぐるみに空のコップを差し出したり、人形を抱いて歩いたり。そんな姿が見られたら、お世話ごっこを一緒に楽しむきっかけになります。食事から寝かしつけまで、ひと続きのお話を教える必要はありません。
まずは、子どもがふだん見ている動作を一つだけ、大人がゆっくりやってみましょう。子どもが見ているだけでも、別の遊び方を始めても大丈夫です。ここでは、興味が向いたときに試せる小さな遊びと、親の手助けを紹介します。
お世話ごっこは 身近な暮らしをまねる遊び
こども家庭庁は、子どもや家庭に関する政策を担う行政機関です。同庁が掲載する『保育所保育指針解説』には、1歳以上3歳未満児の遊びとして、人形やぬいぐるみに布をかけて寝かせるふりを、大人と楽しむ姿が紹介されています。[1]
米国の小児科医の専門団体である米国小児科学会も、2歳のごっこ遊びの例に、ぬいぐるみを寝かせる場面を挙げています。普段の生活で見聞きした動作や言葉が、遊びの題材になるのです。[2]
ただし、資料の年齢区分は「その年齢で必ずできる」という期限ではありません。0歳で人形を見たり触れたりしているときに、お世話の動作を求めなくても大丈夫です。始める目安は、子どもがその動作や人形に興味を向けているかに置きましょう。
最初は人形と道具一つだけを用意する
人形やぬいぐるみは、製品の対象年齢を満たし、持ちやすく、壊れたり部品が外れたりしていないものを選びます。今あるお気に入りで始められるなら、お世話セットを一式そろえる必要はありません。
添える道具も、まずは一つで十分です。飲ませるふりなら空の割れないコップ、拭くふりなら清潔でほつれのない布など、遊びたい動作に合うものを大人が選びます。布は顔にかけたり、首や体に巻いたりしないよう見守ります。
消費者の安全を守る行政機関である消費者庁は、対象年齢と、取れてしまう小さな部品の確認を呼びかけています。人形本体だけでなく、付属のおしゃぶり、靴、食べ物なども確認しましょう。対象年齢に満たないセットは使いません。[3]
小さな飾りや食材に見立てた小物を足すより、今まねたい動作ができる道具を一つ置くほうが、何をする遊びか伝えやすくなります。食べさせるふりには、本物の食べ物を使わなくてかまいません。
飲ませるふりや拭くふりなど一つの動作から始める
飲ませるふりをする
人形を大人の手元に置き、空のコップを近づけて「どうぞ」と言ってみます。その後、子どもが同じコップに手を伸ばしたら渡します。自分が飲むまねをした場合も、その遊び方を受け止めてかまいません。
口や手を拭くふりをする
布で人形の口元を軽く拭き、「ふきふき」と短く言います。子どもが布だけを握っていたら、そのまま待ちましょう。大人が人形を支え、子どもは拭く、という分担もできます。手をつかんで何度も同じ動きをさせる必要はありません。
人形を寝かせるふりをする
人形を床の安全な場所へ横にし、「おやすみ」と声をかけます。子どもがすぐ起こしたら、「起きたね」と続けてもいいですね。抱く、寝かせるのどちらか一つだけでも遊びになります。
最初から三つ全部を続けず、子どもが見ている動作を一つ見せて待つことを大切にしましょう。これは人形を使う遊びです。実際の赤ちゃんへの授乳や抱っこ、寝かしつけを子どもに任せる練習とは分けてください。
親は 遊びを進めすぎず短い言葉を添える
人形にコップを差し出したら「飲んだね」、抱き上げたら「抱っこだね」。まずは、子どもが今していることに短い言葉を添えます。「次はごはん、その次はお風呂」と、大人が先の展開を決めなくても遊べます。
子どもが何かを渡してくれたら「ありがとう」と受け取る。人形をこちらへ差し出したら、大人が抱いてみる。声が出ていなくても、差し出す・見る・待つといった動きに応えることで、やりとりを続けられます。
『保育所保育指針解説』は、子どもが表しているイメージを大人が受け止め、一緒に遊ぶことを重視しています。[1] 家庭でも、教える言葉を増やすより、子どもがしたことに一つ返すところから始めてみてください。
「赤ちゃん、どうして泣いているの?」「次は何をするの?」と答えを求め続ける必要はありません。子どもが話したいときには聞き、手を動かしているときには見守る。その日の楽しみ方に合わせましょう。
興味がないときや投げるときは遊び方を見直す
人形には触らずコップばかりを重ねる日もあります。その場合は、対象年齢や安全な使い方の範囲で、今の遊びを楽しんでかまいません。人形への関心を見ただけで、やさしさや思いやりを判断することはできません。
人形を投げて人に当たりそうなら、まず止めて「ここに置こう」と短く伝えます。大人がそっと置く動きを見せ、それでも投げたい様子が続くときは、人形の遊びを終えます。「赤ちゃんがかわいそう」と長く諭すより、安全な行動を具体的に知らせましょう。
疲れている、持ちにくい、ほかの物が気になるなど、その場の様子も見てみます。続かない日は、お世話の役をやらせるより、いったん片づける選択で大丈夫です。次に関心を向けたとき、また短く誘えます。
子どもが繰り返したい動作を一緒に楽しむ
毎回「飲ませる」だけでも、同じ人形を抱くだけでも、すぐに新しい展開を足す必要はありません。子どもが自分で始めた動きを見て、大人が相手になれるところだけ加わります。道具を増やすのは、今の物ではしたいことが難しそうなときに考えましょう。
抱こうとして何度も落とすなら、人形が重すぎたり、大きすぎたりしないかも見ます。抱かせようと持ち方を直し続けず、床に置いた人形にコップを近づけるなど、持ち上げなくてもできる遊びへ変えられます。
遊びの後は、人形を置く場所へ一緒に戻します。コップや布も大人が確認し、汚れた物は製品に合う方法で手入れします。小さな付属品がある場合は、出したときだけでなく、片づけるときにもそろっているか確かめてください。
積み木や教材とごっこ遊びを同じ部屋で楽しむ工夫は、家庭での遊びの組み合わせ方の記事でも紹介しています。
IMANO MANABI(イマノマナビ)からは、ふだんの暮らしの中で子どもがよく見ている動作を、一つ選ぶことをおすすめします。「どうぞ」と差し出す、「おやすみ」と横にする。短いやりとりを親子で楽しめれば、立派なお話に仕上げなくても十分です。
参考情報
- こども家庭庁(厚生労働省作成)「保育所保育指針解説(平成30年度〜)」
- 米国小児科学会「Social Development: 2 Year Olds」
- 消費者庁「Vol.544 おもちゃなど小さなものを誤飲する事故に注意!」
情報確認日:2026年10月19日





